その時の気分みたいなものによって「頑張ろう」などと力が入ることがあるが、得てして続かないものである。自分の経験からすると、年始や年度初めや仕事があまり上手くいかず挽回したい時には気持ちが前のめりになりがちだ。また、特にTVをはじめ、メディアはこういった気持ちを煽りがちであり、世の中全体が躁状態にあるようにも感じる時がある。
しかし、本物の力を身に付けるためには、一時の高揚感に頼るのではなく、心の奥深いところにある凪の力強さみたいなものを静かに磨き続け、それを更なる力に変えていく必要があるのではないか。
この点、作家の村上春樹さんの規則的な仕事のスタイルや、動物行動学者の日高敏隆さんが述べられている「自分の思った道を粛々と行けばいい。人を説得しなくては、なんて思わない。自分がそう思っていればいい、と思う。※1」といった姿勢は参考になるし、また励まされる考え方だ。
また、スポーツの世界でもNIKEのキャッチコピーに使われる「Just Do It」も、これらと同じような思想群にあると思う。若い頃はこのコピーについてはそれほどピンとこなかったが、年を重ねることでその言葉の深さを理解したつもりだ。
いろいろ考えずにとにかく手を動かすことである。気分が乗らない日やうまくできない日も当然あるが只々やることである。また、手を動かしている時はメタで考えないこと。メタで考えるとどうしてもその作業の意義や効率性などが頭にちらついてしまうからだ。
手を動かした分だけ、きっと力が身に付くはずである。
※1 出典:「世界を、こんなふうに見てごらん」 – 日高敏隆 -(集英社文庫)