仕事をしていると面構えのいい人と時々出くわす。なにもハンサムであるとか美人とかいう類いではなく、おそらく正面から仕事に向き合っている自信から出る、何ともいえない表情なのだと理解している。
昔書かれたエッセイなど読むと、「40歳を過ぎた男の顔は履歴書である」みたいな言われ方を目にするが、言い得て妙だと思っている。社会、特に仕事においてどんな苦労をし、どんな形でそれに向き合ってきたかがその人の顔に刻まれているような気がする。困難に正面から向き合ってきた人は、すり傷を負いながらもどっしりとした表情があるし、逆に俗にヒラメ人間といわれる、上の立場の人間のことばかり気にした動きをしてきた人は、どこかヌメヌメとした、いやらしい表情が出てしまっている。
こんなことを感じていることもあり、若手社員の育成においてはその人物がいい表情で仕事をし続けてもらえることを意識している。 中でも意識していることは、人とのコミュニケーションの場でヘラヘラさせないこと、不用意に笑わさせないことである。 表面的にはソフトに見える人であっても、もしくは押し出しの強い人であっても、面構えのいい人の共通項として、その人の奥深いところには無骨さがあるように思っているからだ。
私の師匠は「仕事とは生きざまである」と言って定年を迎えられた。この師匠は会社を辞められるまで、そして辞めた今日も面構えがいい。面構えがいい人のところには自然と人が集まるだろうし、何か見えない運のようなものも惹きつけられる気がする。自分の面構えについては棚に上げて論じたが、面構えのいい人になれるよう日々精進したい。